2009/09/30

続・半男

半男を目にすることが多くなった
日に一度は見る
大概が夕方だ

雨が降った時は軒先にいた
いつも不気味に思えるけれど
雨宿りをしているようで
その時ばかりはくすりと笑ってしまった

半男はどうして僕の前に姿を現すのだろうか
何かを訴えたいのだろうか
そして顔の半分から下はどこに行ったのだろうか?
まさかそれを探して欲しいなんてことはないだろうな
頼まれたって僕にそんな力はない

そんな疑問を解決してくれるようなことが夜にあった
夢に出てきたのだ
半男の下の体が

それはずっと歩き続けていた
どこかにぶつかったり
時折立ち止まったりしながら
何かを探しているようだった
探し物なら用意に想像がつく
顔の半分だろう

その様子を僕はずっと見ていた
滑稽だった
遠くにも行けず
真っ直ぐ歩けず
ところがそれは突然こちらに向かって走り出してきたのだ
逃げようとしても体が動かず
顔半分のない体は僕の目の前で立ち止まると
何かを言った
声は聞こえなかったけれど
唇の形で「見つけた」と言っているのが分かった
僕は両手で赤子のように持ち上げられ
そして男の半分だけの顔の上に乗せられた
僕が半男だったのだ

その夢を見て以来
僕は外で半男を見かけると
自分の顔を触ってみる
そして自分の顔が全部揃っていることを確かめて安堵するのだ

2009/09/27

半男

疲れが溜まっているのか
視界の端に男の顔が半分だけ見えることがある

えっ?と思って改めてそこへ視線を送ると
姿はもうない

僕が最初にそれを見かけたのは夕方だった
何げなく窓の外に目をやると
視界の端にそれを捉えた
けれどもそれはすぐに消えた
屋根の向こう側に顔があって
こちらを覗いていたのだろうと思った

次に見かけたのは階段だった
階段を下っていくと踊り場の陰から顔が覗いているように見えた
今度ははっきりと顔のつくりが見えたような気がした
目は両方とも端に寄っているように見えた
不気味に思いながら踊り場まで下りていくと姿は無かった
ただの気のせいだったのだと思った

そういうことが度々続いた
そこには本当に人がいたのかもしれないし
目の錯覚だったのかもしれない
けれども不思議なことに僕の視界に入るその顔はいつも同じような顔をしていた
その顔は僕の記憶の中にある顔できっと何か印象的なものとして残っていて
疲れていると無意識の内に思い出されるのではないかと僕は想像した
そう思うことで僕はそれから別段気にしなくなった
そう頻繁なできことでもなかったし

そして日が経ち
先週のこと
僕は普段からコンタクトレンズをしているけれど
走ったり飛び跳ねたり激しい運動をすると徐々に頭痛がしてくる
その日も遊んだりしていて午後から頭痛がしていた
我慢できないほどのものではなかったのでいつものようにほっておいたけれど
夕方くらいには歩くだけでがんがんと振動が頭に響いて痛んだ
そう夕方のこと
最初にあの顔を見た場所で
僕は再びあの顔を見た
その顔は屋根の向こう側から覗いていたのではなく
屋根の上にあった
つまりそれは誰かが覗いていたのではなく
顔の半分だけが全てであるということを示していた
そうでなければ誰かが屋根を貫通して顔を半分だけ突き出しているということになるけれど
それは考えられなかった
その時僕はしっかりとその顔を見た
その顔は確かに実在していて消えることはなかった
やはり目は両端に寄っていた
そのどこを見ているのか分からない目を見て
死んでいるのではないかと思った
(顔が半分しかないのだから既に死んでいるに違いないのだが
どうしてか目を見るまでは死んでいるとは全く思わなかった)

その時の僕は驚く程冷静で慌てることもなく
まだ自分の見間違いなのかもしれないと思っていた
僕は同じ階にいた同僚を呼んできて
外を見て欲しいと伝えた

同僚が窓の外を覗くと
「忙しいから何もなければ戻るよ」
と言ってすぐに戻ってしまった

何で?と思って僕が外を見ると
半分だけの顔は跡形も無く消え去っていた

気味の悪い話だと思って僕は
屋根をしばらく見つめていたけれど
やはり頭痛のせいだったかもしれないと思うことにした

僕はその顔のことを半分だけしかないから
大分前に「半男」と名付けていた

今日記を書いていて
よく考えると半分だけの顔だから
「半顔」の方が正しかったかなと思った

つづく・・・

2009/09/21

腹を満たす

食べる物を探し続けて野を彷徨い
ようやく見つけた鼠を焼いて食べる姿と

お店で買って来た鶏肉を
自分の納得のいく方法で調理して食べる姿

僕は鼠を焼いただけのものを食べるその姿に興奮する

生に直結していないものは全て娯楽だ

しょうもない
何もかもがしょうもない
自分がそうなっていくことを感じている
用意された物をこねくりまわすだけだ

そして僕は野を彷徨う事を選ぶかといえば
心の奥底で鼠になりたいと思っている

2009/09/20

病院通い

先週の火水木金と病院に行きました
火曜日は手術やら検査の付き添いで
後の3日間はお見舞い

小さい頃に病院に通っていた記憶があるだけで
ほとんど病院に行ったことがないので
いろいろと興味深かったけれど
やはり怖い

僕が病気になったり怪我をしたりしても病院に行かないのは
恐怖からだときっぱりと断定できる
何に対する恐怖かというと病気という得体のしれないものだったり
怪我をしている人たちだったりで
それが写真や映画だと平気なのに
生身だと耐えられない
僕が医者だったりもしくは今から医学について学べば多分克服できると思うけれど
そんな気持ちにはならないので今のところ病院とは距離を置いているわけです

話を戻して
お見舞いに行くと病院食がまずすぎるというので
それでも食べなあかんでと言ったのだけれど
「じゃあ一口食べてみて」と言われたので
さいの目に切ったサラダのようなものを食べさせてもらった
マヨネーズの味がほのかにするだけで
確かに味が薄い
病院食ってこんなものなんじゃないの?って思ったけれど
看護士さんが「美味しくないでしょ?」っていうくらいだから
やっぱりそこの病院のは美味しくなかったんだろう

入院していて楽しいことなんかなく
日に3回の食事だけが楽しみっていう人もいるだろうに
あんな味だったら治るのも遅くなるんじゃないだろうか

2009/09/13

本屋にて

本屋に行った
自分の肩ぐらいの高さの棚の横を歩いていると
その棚越しにまるっきり自分と同じスピードで歩いている人がいた
まるでそこに鏡があるように思えて
自分の姿がその人になったような気分になる

僕は何だか居心地悪くて立ち止まる
向こうも同じことを思ったのか立ち止まった

そして僕は彼の方を向いた
彼も僕の方を向いた

しばらく見つめ合った後で
僕も彼も頭を掻く

何という偶然だろう

ほらあれに似ている

狭い道を歩いていて
向こうから人がやって来て
お互いに道をゆずろうとして同じ方に動いてしまって
先に進めない感じ

僕も彼も自分が彼(僕)ではないということを証明したいのだけれど
タイミングが悪く同じ行動をしてしまう

しばらくお互い見つめ合った後で
二人して溜め息をついた

「気味が悪い」
僕がそう言うと
彼は棚から本をどんどん取り出し
自分の懐へ入れ始めた
きっと彼なりに自分を証明したかったのだ
もちろん僕はそんなことはしなかったわけで
彼のおかげで
彼は彼
僕は僕であると証明された

僕はその場を後にして
目当ての本を手に入れてから
売り場を後にすると
出入り口付近であの彼が守衛に腕を掴まれていた

僕の方を指差して
「君が悪い」
と言っていたが
僕は何だか安心した

2009/09/06

インド紀行終わり

前に書いてから随分時間が経ってしまいました
写真の入ったデジタルビデオカメラを職場に持っていってしまったので
コルカタに着いて以降の話はぱぱっと端折りながら
今日でインド紀行は終わります

コルカタのハウラーに着いてから
安宿街のサダルストリートへ
街は10年前の面影はほとんどなくて
(というか全く覚えておらず)
ものすごく都会でした

以前は夜中に着いて
電車の中で一緒だった旅慣れた金髪のお姉さんと一緒に
宿を探したけれど
今回は昼に着いたので人に頼らずとも無事に宿がとれました
そして下痢です
そんなにひどくなかったけれど
次の日から悪化し熱も出て
ほとんど外へは出歩かなかったです
カーリー寺院のやぎの断首を見たかったのですが

4日間ぐらい寝て起きて
たまに外に出てを繰り返して
最後の日にはラビンドラサラーニという通りに行って
タブラーを買いました
限界まで値切れたと思います

最終日はインドの独立記念日ですごい数の人でした

飛行機は夜中の2時発

出発してすぐに機内食が出て
そんな夜中に誰が食べるんやろうと思ってたら
みんなしっかり食べてました

マニラ→タイと経由して日本へ

京都では五山の送り火だったとタクシーの運転手さんに言われて気がついたけれど
数時間差で見られず
日本は静かやなあなんて思いながら
家に着き
タブラーのケースを開けてみたら
タブラーがベコンとへこんでました

預けた荷物は運ぶ時にぶん投げてるらしいですね
腹が立つより笑ってしまいました

向こうで子どもたちとたくさん交流ができてよかった