2009/09/13

本屋にて

本屋に行った
自分の肩ぐらいの高さの棚の横を歩いていると
その棚越しにまるっきり自分と同じスピードで歩いている人がいた
まるでそこに鏡があるように思えて
自分の姿がその人になったような気分になる

僕は何だか居心地悪くて立ち止まる
向こうも同じことを思ったのか立ち止まった

そして僕は彼の方を向いた
彼も僕の方を向いた

しばらく見つめ合った後で
僕も彼も頭を掻く

何という偶然だろう

ほらあれに似ている

狭い道を歩いていて
向こうから人がやって来て
お互いに道をゆずろうとして同じ方に動いてしまって
先に進めない感じ

僕も彼も自分が彼(僕)ではないということを証明したいのだけれど
タイミングが悪く同じ行動をしてしまう

しばらくお互い見つめ合った後で
二人して溜め息をついた

「気味が悪い」
僕がそう言うと
彼は棚から本をどんどん取り出し
自分の懐へ入れ始めた
きっと彼なりに自分を証明したかったのだ
もちろん僕はそんなことはしなかったわけで
彼のおかげで
彼は彼
僕は僕であると証明された

僕はその場を後にして
目当ての本を手に入れてから
売り場を後にすると
出入り口付近であの彼が守衛に腕を掴まれていた

僕の方を指差して
「君が悪い」
と言っていたが
僕は何だか安心した

0 件のコメント:

コメントを投稿