2009/11/22

つるりとした天気

小さな女の子がいた
背が小さい
目鼻が小さい
絵本に出てくるような女の子だった
女の子はよく動いた
それは小さいからたくさん動かないといけないということもあったが
実際働き者であった

それゆえ多くの人から好かれた
「あの子は小さくて可愛らしい」
「いつも一生懸命だ」
そう言われても女の子はおごるところが一切なかった

別の場所で大きな女の子がいた
背が高く
声が低く
これまた絵本に出てきそうな女の子だった
女の子はゆっくり動いた
それは体が大きいからだった
決して怠け者であったわけではなく
むしろ働き者だった

多くの人が頼りにした
「一度に荷物がたくさん運べるね」
「女の子なのによくやる」
そう言われても女の子はおごるところが一切なかった


そんな大きな女の子が小さい女の子と一緒に働くことになった
大きな女の子が一度荷物を運ぶ間に
小さな女の子は10往復して荷物を運んだ
けれど運ぶ荷物の量は同じだった

小さな女の子も
大きな女の子も
互いを
「よく働く子だな」
と思った
そしてすぐに仲良くなった
大きな女の子の足の間をくぐり抜けて
小さな女の子は荷物を運んだ
その働きぶりはすぐに評判になった

人々は口々にこう言った
「小さいのによく働くね」
「あの子は体が小さいのに実に一生懸命だ」
「思わず応援したくなってしまう」

褒められているのはいつも小さい子の方ばかり
でも二人とも分かっていた
「仕事の量はいつも同じ」

そんな日がずっと続いた

そしてある時
足の間をくぐる小さな女の子を
大きな女の子が踏んづけた

もう慣れているはずなのに

つるりとした天気の日だった

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