2009/11/19

化かすカス化かされるカス肩すかす

「種なしミカンや種なしりんごっていうのは何のために存在しているのか?
子孫を残すっていうことができない果実に存在意義はあるのか?
そんなことを考えてしまうんだ
あれらの存在に意義っていうのがあるとしたらそれは同じ種族に対してではない
他の種族に対してだ
つまりそれは人間だ
人間があれらを作ったのだ
自分たちのために

意義はナイフで切り取られ
口で噛み締められ
胃を通って
人間の腹と心を満たす

あれらは最初から他者である人間のためにのみ存在する
いかに仲間からののしられようが仕方がない
それを運命と呼ぶのだから」

「人間だって
人間だって
人間にだって品種改良された果実のようなものがいる
そういう種類の人間は自分の人生を自分のために費やすことを許されない
一生他人にこき使われ
一生を他人に捧げ死んでいく
種もないやつ能もないやつだと蔑まれ
人間の中にだってあるんだ
搾取する側と搾取される側が

搾取される側の意義って何だ

意義とは
その労働力であり
その尊厳であり
第三者が自らの私服を肥やすための
糧だ

人間にあるのは本能だけではないぞ
思考だ
感情だ
運命といって受け入れられる者がどれだけいるか
運命といって受け入れられるならどれだけらくか」

「果物からも人間からも搾り取るだけ搾り取って
甘い汁だけ吸ってのうのうと生きている人間がいる
搾りきってもう一滴の汁も出なくなったら
用済みのカスだといって捨てられる
だが覚えておけよ
お前には持ち得ないものを彼らは持っている
それは何人たりとも決して奪えない
噛み砕こうとも最後までお前の下の上に残るだろう
それは硬く
決して折れることのない芯だ
それは甘くだれたお前の舌を貫くだろう
その痛みで永遠のたうちまわるのだ
それでお前の奪った彼らの一生とで相殺されるとは思うな
その芯はやがて幹となるだろう
そしてお前の舌の根に根を張り
枝葉は生い茂り
やがて実を結ぶのだ
当然
種のあるな」

スーパーの果物売り場で
僕と青いリンゴはそんな会話を交わしたような気がしたのです

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